太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】

「福島は行った事ねえもん。

わかんねえよ。

東京は、ま、たまには雪だって降るもんだ。」

二つ年下の忠志は、そう言って、ストーブを横から大きな掌で乱暴に叩いた。

「全然暖かくならねえな、壊れてんの？。」

そう言う忠志の脇に転がって、地図の様に点々と濡れている黒い革の鞄の中に、何枚かの白い紙とデータディスクが見えた。

私は子供騙しの様な、水玉の赤いパジャマを身に付けた体を引きずって、ズリズリと青い絨毯を転がりながら中を見た。


「六日の会議資料、作って置いてくれたの？。」


「おう。昨日な。正月休み明け、一発目の会議はダルいな。

でも部下としては、当たり前ですわ。」


忠志は私の直属の部下になる。


中堅のリサーチ会社。私ももう五年目。

忠志は三年目だ。


俺はやればデキル子だからと付け加えて、忠志は笑った。


その時机の上の携帯電話のバイブレーターが、ドルドルドルと鈍い音を起てた。