あのころ…
 気がつくと、僕はカラオケのソファで寝ていた。
 それに気づいた高峰が僕を外に連れてってくれた。
「松本…」
「…」
 僕は高峰の背中に乗ったまま、寝た振りをする。
「寝ててもいいや、聞いてくれ」
「…」
 僕は高峰の広い背中を見つめる。
「俺さ、中学の時…生まれて初めて告白して、フられた」
「…」
「でさ、フられた理由が…」
 なんなんだろう。高峰は、ホモなところ以外は悪いとこはないと思う。
「その、告白したやつがさ…」
 高峰は10秒ほど黙り込んだ。
「…北中の松本健が好きなんだって言った」
「…」
 僕はなるべく動かないようにした。
 僕は身を固めた。
 高峰がフられたのは…僕が原因?
「でも、俺さ…そう言われて…目標ができた」
「…」
「松本健を超える。日本一のバスケプレイヤーになる」
「…」
「あいつはどんな理由で、松本のこと好きだったのか分かんないけど…、バスケでは勝ってやる。そう思うんだ」
「…」 
 僕の目から涙がこぼれた。
 どうして泣いちゃったのかはわかんない。
 でも…泣いたんだ…。
 高峰の制服に涙がしみこむ。
「松本?」
「…っ…」
「泣いてる?」
「…泣いてない…っ」
「そっか」
「…」
 僕は高峰の背中で泣き続けた。
 涙の理由は分からない。
 高峰は優しい。
 僕が女なら惚れているだろう。
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