あのころ…
 僕は高峰に家まで送ってもらった。
 目が赤いまま、家に入り、風呂にも入らずベッドに倒れた。
「…なんで…なんで泣いたんだよ」
 僕はラビット侍のぬいぐるみを抱いて呟く。
「なぁ…優璃…おまえは…僕を見てないのか?」
 このラビット侍のぬいぐるみは優璃が、初めてプレゼントしてくれたものだ。
 ちなみにラビット侍とは、国民的人気アニメだ。うさぎの「ラビット侍」が悪者を成敗する話で、ラビット侍はその話のヒーローだ。
 僕は生まれてから15年間、ずっとラビット侍を愛してきた。
 それをよく知る優璃にもらったぬいぐるみは、数あるラビット侍コレクションの中でも一番大事にしているものだ。
 ずっと使ってるから、ボロボロだけど、大切な思い出だ。
 ラビット侍のぬいぐるみに僕の涙がしみこむ。
 そのまま僕は電気もつけっぱなしにしたまま、泣き寝入りしていた。
 
< 13 / 21 >

この作品をシェア

pagetop