あのころ…

バスケ部

「健ーっ!!」
 窓の外から聞こえる優璃の声。
 僕は鏡を見た。
 予想通り目が腫れている。
「優璃、翔太、先に行ってて!」
 僕はタオルをかぶって窓から優璃に言った。
「え…わっ…分かった!」
 優璃と翔太が僕の家から離れていく…。
 こんな顔…優璃に見られたくない。
 なんで…なんで泣いたんだよ。
 僕は時計を見る。
 時間がない。
 遅刻する…。
 …高峰に…会いたくない…。
 昨日のこと…気にしてるかな…。
 忘れてたらいいのに…。
 ここに、ドラえもんがいたら、高峰の昨日の記憶を消してもらいたい。そんな道具があるかは別として。
「健ー? 起きてるのー?」
 母さんの声。
「…起きてるよ。すぐ下に行くよ」
 僕は制服を手に取る。
 高校に入ってまだ2日目なのに、ずいぶん経ったような気がする。
 制服に袖を通し、鞄を持ち、とりあえず体操服も持って部屋を出た。
 そして母さんに弁当をもらって家をでた。
「え…」
「よっ!」 
 家の外に…高峰がいた。
< 14 / 21 >

この作品をシェア

pagetop