あのころ…
「中学のとき、全国までいったんだろ?」
「そうだけどさ」
「おまえのフリースロー、ほとんど外さないんだろ?」
「全国で負けたのは、そのフリースローが全然決まらなかったんだ」
 僕は呟く。
 そうだ。僕が、びっくりするぐらいフリースローを外した。それで負けたんだ。
「でも、その後…毎日練習してただろ?」
「え…なんで…」
 僕は高峰の顔を見る。真剣な眼差しだ。
 そう、僕はあの試合で負けてから中学卒業まで毎日、近所の公園でフリースローの練習を続けた。その練習で外したのは一度もない。
「俺、見てたんだ。いつ見ても、松本がバスケットボールもって練習してた」
「…でも、ムリだよ」
「できるよ。おまえのディフェンスすげーよ。前やったときさ、消えたみたいにいなくなって、手からボールが消えてた」
 高峰が僕に微笑む。
「だからさ、またやろうぜ。今度は一緒にさ」
「…高峰」
 僕は高峰の名前を呟いた。
「ん?」
「体験入部は行ってみるよ」
 僕の一言に、高峰の目が輝いた。
「マジで?」
「うん、でも体験な?」
「よかったら、入るんだろ?」
「うん」
「やったー!」
 高峰が踊り狂っている。
 いつの間にか、優璃と翔太はいなくなっていた。
 はずかしいヤツが近くにいるから、僕はその場から離れようとした。
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