あのころ…
「松本ぉっ!」
「ぐぇっ!」
 高峰が逃げようとする僕に抱きついてきた。
「やめろよ! みんな見てるだろ!」
「いいんだって! 俺らの愛を見せつけようぜ!」
「キモいんだよ! 離れろ! 変態ホモ男っ!」
 僕は高峰の腕の中でじたばたする。(この表現はまずいか…?)
 …決して変な意味ではない。勘違いしないでほしい。
 そんなことをしていると、バスケ部の人が寄ってきた。
「健ー!」
「…先輩?」
「ん? 松本、知りあい?」
 僕はうなずく。
 僕たちに近づいてきたのは、中学の時のバスケ部の先輩だ。
「マツケンやないかぁっ!」
「先輩っ! その呼び方…やめてくださいっていつも…ぐぅっ…」
 僕は先輩にぎゅうううう(あと100個「う」があってもいい)と抱き締められる。
 …苦しい。バスケ好きには、抱きつく人が多いのだろうか…。
「松本…誰? そのひと…」
「うぐっ…ちょっと先輩…離してくださいっ…」
 僕は先輩の腕を振りほどこうとする。
 でも、先輩の力にはかなわない。(そういや、さっき高峰がなんか言ったような…)
「健ー、バスケ部入るんやろー?」
「えっ…」
 僕が返答に戸惑うと、先輩の腕の力が強くなったような気がした。
「はっ…入りますっ…! 喜んで入部しますっっ!」
「やんなぁーっ! 入るよなぁっ!」
 その言葉と同時に、先輩の腕から解放された。
「あ! ここにもエェ感じのヤツがおるやないかぁ!」
「え? 俺ですか?」
 先輩の目に止まったのは高峰だった。
「あっ、俺、高峰翔っていいます!」
「あぁ、俺はな、佐伯洋一や。よろしくな」
「よろしくお願いします! あ…佐伯先輩って、関西の人ですか?」
「あー、やっぱりわかる? ガンバって東京語にしてはるんやけどなぁ…」
「あっ! それ、わかります! 俺、もともと九州の人間なんすよ。それで…」
 話が長くなってきた。
 ってか、東京語って…。ここ埼玉なんですけど…。
 逃げたら、このゴツイ2人に捕獲されるだろうから、話が終わるまで待とう…。
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