あのころ…
 高校着…
 1着、翔太。2着、優璃。ビリ欠、僕…。
 優璃には勝てるかなって思ってたのに…。
「健、運動能力低下?」
 優璃がヘラヘラ笑っている。
「別に。たまたま運が悪かったんだ」
 僕は他人から見たら言いわけみたいだけど、ホントの話だ。だって、行く途中に5つ信号があって、翔太は0個、優璃は2つ、僕は5つひっかかった。
「健、信号に嫌われてるんじゃない?」
「うるせぇよ…」
 僕がスキップしている優璃を眺めていると、誰かにぶつかった。
「あぅっ!」
 僕は情けない声を出して倒れる。
 見上げると、ゴッツイ男子生徒が立っていた。
「ごっ、ゴメンなさいっ!」
 僕は急いで謝る。(だって怖いから…)
「おまえ、その顔にその身長、松本?」
「え?」
 よくクラス章を見ると、1年だった。
「松本だろ? 北中の」
「…北中の人?」
「いやいや、俺は西中。覚えてないか?」
 …こんなゴッツイ人、滅多に忘れないと思う。
「バスケで交流戦したじゃん!」
「交流戦? あぁ、あれか」
 交流戦とは、この町の北中、南中、西中、東中、中央中の5つの学校の試合のことだ。
「俺、西中の1番の高峰! 高峰翔!」
「高峰…翔…」
 僕は頭の中のタンスの引き出しを探し回る。
「あぁ! 高峰! 決勝戦の後、一緒に弁当食べたよな!」
「うん、うん!」
 そういえば、そうだった。
 半ば強引に拉致されて、一緒に弁当を食べたな。あぁ…あんなこともあったな…。
「俺はおまえに惚れた!」
「は?」
 僕は突然の言葉に口をぽかんと開く。
「ぼ…僕?」
「そうだ」
 なんだなんだ? どういう…。
「えぇぇぇっ?!」
 僕は周りの目も気にせず、絶叫した。
「なっ、何言ってんの? そっ、それって、likeの意味で? それとも…ラ…loveの意味でっ?」
 僕の声が震える。
「loveだ。当然だろ?」
「…マジかよ」
 loveの意味…。入学早々、同性に告られる…。
< 3 / 21 >

この作品をシェア

pagetop