あのころ…
「ウソだろ…」
「ウソじゃない。俺は本気だ」
「冗談だろ…」
「本気だっつってんだろ?」
「ウソだ…」
「俺の気持ちを受け取れ!」
「ウソだと言ってよ、ジョー!」
「俺は高峰だ!」
 僕の独り言に高峰が入ってきて、会話のキャッチボールができない。
 「ウソだと言ってよ、ジョー!」ってのは、中学の時の友達がよくいっていた言葉だ。意味というか、由来は1919年にメジャーリーグで起こった「ブラックソックス事件」とかいう、八百長事件に関わったらしいジョー・ジャクソンが野球界から永久追放になったときに、そいつのファンだった一人の少年のセリフだという。…まぁ、その言葉がたまたま口から出た。
 まぁ、僕の豆知識はさておき…。
「ふざけんなよ! 高峰がホモでも、僕は男にloveの意識を持ちたくないっ!」
「怒るなよ、松本」
「怒ってないし!」
「いや、怒ってるだろ…」
「怒ってないっ!」
 僕は高峰から逃げるように立ち去る。
 1年5組…1年5組…
「健ー! こっちこっち!」
 優璃が教室の前で手を振っている。優璃と翔太も1年5組だった。
「健! 入学式、始まるぞ!」
 翔太も教室から顔を出している。
「松本! おまえも5組か!」
 …背後から聞きなれてないけど、ついさっき聞いた声…。
「高峰…、おまえもって…、まさか…」
「俺も5組だ」
 神様って最悪な奴だな…。ここにいたら、ぶん殴りたいね。
「いやぁ、やっぱ俺ら縁あるんだって!」
「そんな縁、ぶち切りたいね」
「そんなこと言うなよー」
 高峰は僕の肩をバシバシ叩く。
「仲良くしようぜ! こっちでもバスケすんだろ?」
「へ? バスケ?」
「え? やらねぇの?」
 高峰は目を丸くしてこっちを見ている。
 バスケか…、どうしようか。中学の時は身長upを望んで入ったけど、別に伸びなかったしな。
「やるよな? 松本」
「えっ…」
 高峰の目がキラキラしている。
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