あのころ…
「松本はなぁ、全国5位のバスケ部のキャプテンなんだぜっ!」
「ばっ…、なに言って…」
 僕は高峰の突然の言葉に慌てる。
 今言わなくてもいいだろっ!
「すっごーいっ!」
「ちっちゃいのにやるねーっ」
「かわいいのに、かっこいーっ!」
「惚れちゃうわぁ」
 僕の周りに女の子たちが集る。
 …優璃以外の女の子…。
 しかも、ちょっと胸に突き刺さる言葉があったかなー…。
「じゃあ、松本から」
「へ?」
「ここ、カラオケ」
「知ってる」
「じゃあ、歌おうよ」
「高峰が?」
「おまえがだよ」
「僕?」
「うん」
「松本健?」
「うん」
「…」
 マジか…。
「でも…」
 僕はそこで言葉が止まった。
 女の子の目がキラキラしている。
 こんな状況で断れるほど、僕は強くない。
「-っ! 松本健、歌いますっ!」
「いぇーいっっ!」
 僕の一言でものすごく盛り上がる。
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