R -gray*dearest-
1.lightning
--都内某所のあるセンター街。
静けさの中に複数の足音が交わる。
そして、怒声。
そんな中、
1人の少年が息をきらして走っていた。
「…な…なんなんだよ、コレッ!」
「待ちやがれっっ!!」
知らない男の怒声が、
その少年に浴びせられる。
その少年、秀(シュウ)は、
紺色のスクールバッグを抱え、
死に物狂いで走っていた。
−数分前、
学校から下校する秀の前に
数人のヤンキー達が立ちはだかった。
この物騒なご時世、
彼らは、
秀に「金を貸せ。」と要求してきたのだ。
いわゆる“カツアゲ”。
秀は近頃、
力づくで金を奪い取られるという事件を度々耳にしていた。
その事件の被害者は、
ヒドイもので
歯を数本折られたらしい…。
そ、そんなの嫌だっ!!
歯は死守したいっ!!
そんな痛い事を思いだしてしまっては、
回れ右して逃げ出さずにはいられなかった。
しかし、今さら後悔が襲う。
素直に渡してれば、
こんなに走らなくても良かったかも…?