ヒメ恋~Last Love~
小さい頃から家を空けることが多かった両親。
「仕事だから我慢してね。いい子にしてたらお土産たくさん買ってくるからね」
オレの頭を撫でながらそんなことを言い、いつも腕を組んで出かけていた両親。
幼いながらに、自分が将来一條財閥を継ぐことを自覚していたオレは、泣くこともせず、ただジッと姿が見えなくなるまで二人を見送った。
本当は寂しくてたまらなかったのに……。
両親が忙しいのは、オレのために一生懸命働いているからなんだと、いつもメイドが言っていた。
だから我慢したんだ。
友達はみんな家族と旅行に行ったり、週末はテーマパークに連れて行ってもらったりしていたけど、オレは家族で旅行したこともどこかに出掛けたこともなかった。
近所の公園でもいい、家族三人でどこかに出かけて一緒に過ごしたい。
幼い子供なら誰もが抱くそんな感情をずっと、小さな胸に必死に押し込めていた。
口にすると両親が悲しむと思ったから。
そして両親の姿が見えなくなると、いつも部屋に籠もって泣いた。
部屋の外に声が漏れないように、ベッドで布団を被って声を殺しながら。
「お父さん……お母さん……僕を一人にしないで」