ヒメ恋~Last Love~
そんな偉大な母を横目に、あたしたちは2人並んで廊下を歩いていた。


どんなお話なのかな?
…色々な考えが錯綜する。


「美海…もう我慢しなくていいわよ?」


「え?」


「ずっと…泣きたいの…、我慢していたんでしょう?」


あたしは歩を止めた。


「どうして・・・」

思わず口をついて出た言葉。


「私はあなたの母親よ?ずっとあなたを見ていれば分かるわ…。海里くんのこと…、ショックだったんでしょう?」


「ーーッ」


この瞬間、あたしの中の張りつめた緊張の糸が…プツンと切れた。


「今なら海斗も誰も見ていないから…泣きたいだけ泣きなさい」

そう言いながら、優しい腕であたしを包んでくれた。


全てお見通しだったんだ・・・。
知っていて…黙って見守ってくれていたの・・・?


母のあたしへの気遣いと抱きしめられた温もりが、より一層あたしの中の、切ない、胸が締め付けられるような感情を掻き立てた。








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