ヒメ恋~Last Love~

「会ったことはないけど、この前の食事会で君が彼の結婚話を聞いた後、急に様子が変わったから」


苦笑するしかない。

アレを見られていたんだ……。


颯斗さんが気づくくらいだから、きっと両親もその時から薄々何かを感じ取っていたに違いない。


「その通りだよ。……海里が……この子の父親」


あたしは颯斗さんを真っ直ぐ見つめて事実を認めた。


「そっか、やっぱり」


お互い口を閉ざして、ただ見つめ合う。

颯斗さんが今、何を思っているかは分からない。





「オレ、自分の父親の顔知らないんだよね」

「え?」


この沈黙を破ったのは、颯斗さんの突然の告白だった。


「オレの父親、誰か分からないんだよ。母親が最後まで教えてくれなかったから」

「最後まで?」


「オレの母親、2年前に亡くなったんだ」


「……そうなの……」


初めて知る、颯斗さんの境遇。


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