ヒメ恋～Last Love～

しばらく黙ってあたしを見つめていた父が、ゆっくりと口を開いた。


あたしの心臓は緊張からずっとドキドキしっぱなし。


「颯斗くん……君もアメリカに行ってくれるか？」

「お父様!?」


まだあたしと颯斗さんの結婚を諦めていないの？

結婚はしないと、そう言ったはずなのに……。


「違うよ、美海。結婚の話じゃない。……颯斗くん、私たちがアメリカに行くことはできない。だから君が、アメリカで美海を支えてやってくれないか？」


父の表情は真剣そのもので、

「やはり君には酷な話か……？」

だけどほんの少し自信なさげに、探るように颯斗さんに尋ねる。


そんな父の姿に微かに口元を緩め、

「いいえ。是非そうさせて下さい」

あたしを見ながら颯斗さんは答えた。


「美海さんのパートナーにはなれなくても、良き相談相手にはなれますから」


あたしに満面の笑顔を見せた彼。

どうしてあたしはこんなに素敵な人を好きになれないんだろう？


どうして海里ばかりが、


あたしの心を占めるんだろう？