ヒメ恋~Last Love~

「おかえり、美海」


海里がいつもの笑顔で迎えてくれた。


「……ただいま」


それなのに、あたしはさっき車の中で考えていたことをまだ気にしていて。

大好きな人の前なのに、自然に笑えない。


そんなあたしの異変に海里はすぐに気づいた。


「美海?」

「ん?」

「何かあった?元気ないけど」


海里があたしの頬を触りながら顔を覗き込んでくる。

触られてる方の頬がどんどん熱くなっていくのが分かった。


たったこれだけのことで、体中の細胞が熱くなる。


それくらい、あたしって本当に海里のことが大好きなんだ。

だから、余計な心配をかけたくない。


「なんでもないよ」と、精一杯の笑顔で答えた。


「今日ね、お父さんの会社の人に会ったの。メンズフレグランスのイメージキャラクターになった人がね、お父さんの会社の人だったんだよ。すっごいかっこよくて、最初はモデルさんかと思っちゃった」


「オレよりもかっこよかった?」


海里がニヤニヤ笑いながら聞いてくる。


あたしの答えなんて、聞かなくても分かってるくせに。




……海里はズルイ。


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