ヒメ恋~Last Love~
海里に1年ぶりに抱きしめられたあたしは、そのまま海里の胸に顔をうずめた。
あたしの全てを包んでくれる、広い広い胸。
いつだってあたしは、海里にこうされると心を落ち着けられる。
だけど今日は違った。
海里の匂いに混ざって、彼女の香水の香りがする。
この香りって……
よりにもよって、どうしてこの香水を選ぶんだろう?
これはあたしの大好きな香り。
あたしのための香り。
──…『MiU』の香水。
“大人可愛い”をテーマにした香水。
幼い印象が強かった彼女には、どう見ても不釣り合いな香りだ。
醜い女の、ただのヒガミかもしれないけれど。
最近、自分の中のドロドロとした醜い感情が見え隠れして、そんな自分自身が本当にイヤになる。
だけど醜くなるのは、あたしがそれほど海里を好きだってこと。
海里の腕の力が強くなった。
と同時に、フワッと香るMIUの香水。
彼女の香りが移ってしまうくらい、近くにいたということ?
バカだ、あたし。
どうして気づいてしまうんだろう。
気付かなければいいのに……。
自分を苦しめることになんて。