ヒメ恋~Last Love~

海里に1年ぶりに抱きしめられたあたしは、そのまま海里の胸に顔をうずめた。

あたしの全てを包んでくれる、広い広い胸。


いつだってあたしは、海里にこうされると心を落ち着けられる。


だけど今日は違った。



海里の匂いに混ざって、彼女の香水の香りがする。


この香りって……

よりにもよって、どうしてこの香水を選ぶんだろう?


これはあたしの大好きな香り。

あたしのための香り。


──…『MiU』の香水。


“大人可愛い”をテーマにした香水。


幼い印象が強かった彼女には、どう見ても不釣り合いな香りだ。


醜い女の、ただのヒガミかもしれないけれど。


最近、自分の中のドロドロとした醜い感情が見え隠れして、そんな自分自身が本当にイヤになる。


だけど醜くなるのは、あたしがそれほど海里を好きだってこと。


海里の腕の力が強くなった。

と同時に、フワッと香るMIUの香水。


彼女の香りが移ってしまうくらい、近くにいたということ?


バカだ、あたし。

どうして気づいてしまうんだろう。


気付かなければいいのに……。

自分を苦しめることになんて。


< 59 / 300 >

この作品をシェア

pagetop