転校
―イジメが続くある日、月曜日恒例の朝礼を体育館でしていた。

校長先生の長い話、校庭だったら何人か陽射しにやられて倒れていそうだ。

そんな長い話が終わりに近付いた頃、私は手に持っていた体育館シューズを落とした。

「あっ!」

すぐ拾おうと腰を屈めると、其処には他の手があった。

―また何かやられる!

直感で思い、私は体を起こしてその手の主を見た。

「はい!落としたよ?」

意外にも笑顔で、その子は私に体育館シューズを持たせてくれた。

「あ、ありがとう・・・」

「まゆちゃんだよね?わたし、のぞみ!笠野 希美!」

「のぞみ・・・ちゃん?」

同じクラスの子だ。
そう言えば、この学校に来てから人の名前を呼ぶのは始めてだ。
いつも名前を呼んでも無視された。

「ちゃんはいらないよ!希美って呼んでね!」

「の、のぞみ・・・」

「うん!」

正直、何で私にこんなに親切にしてくれるのか分からなかった。
クラスでイジメられている私に、平気で近付いてくるなんて・・・

頭がどうかしてしまったんじゃないだろうか?

「まゆちゃん、暗い顔してちゃダメだよ!」

「だって・・・みんな怖いし、わたし本当は学校来たくないもん・・・」

「ふ〜ん・・・あ!じゃあわたしが怖くないようにしたげる!」

「え!?」

私は目を丸くして希美を見た。
何を言い出すのだろうと・・・―



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