フランケンシュタイナー
ナマチョにささぐ。
あの男と目が合ったセツナ、脚がひとりでに走り出してた。

スピードにまかせて床を軽く蹴り、テーブルに飛び移る。
ターゲットまで約2M。
失敗は、許されない。

短い助走をつけ、スパイクを打つ要領で、右足で踏み切る。右、ひだりみぎ! こんなに硬いテーブルじゃ、反動なんて生まれやしない。腰を屈め、体中のあらゆる筋肉を縮めるだけ縮めた後、

爆発するように、跳躍。


脳内BGMは今更t.A.T.u.の「Not Gonna Get Us」
あるはずのない空気の階段を1歩、2歩、3歩。
覆い被さって、太ももで男の首を挟むことに成功した。

上目遣いの男の目。まつ毛が意外と長いのがまた気持ち悪い。

背骨がぞわわとさせる悪寒を振り払うように、内ももと背筋にありったけの力を込めて、私はブリッジしながら後ろへと、跳んだ。

t.A.T.u.はなぜか時折スロー再生で私の脳裏をかすめる。視界には、けばけばしい壁紙と、天井から吊り下げられるようにしてなお歌い続ける秋。

永遠の中の一瞬。

男の頭は確かに私の足の間にあったけど、まるで空を飛んでいるかのような自由。宙に舞う醜い顔のいかつい体はおそらく世にも美しい放物線を描いており、まるで冬虫夏草のごとく、この最低な生物と一体化したような錯覚に陥った。

だけど、垂直に持ち上がった男の体が最高到達点を越えると、強烈なGが前触れもなく襲いかかり、再び私はめくるめく現実へと引き戻される。

終末への加速。

落ちゆく先は、

デッド、

オア

デッド。


私は腹にありったけの力を込めて、落下する奴の頭部を床へと叩きつけた。

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