破   壊
『この前は、話の途中で終わりになってしまったから、続きを伝えようと思ったんだ。

 僕、もうすぐ病院でいろいろ調べられるらしいから、そうすると、先生とは暫く話せなくなるからね。

 篠塚先生の事だよね。

 先生が、何処迄調べたか判らないから、きちんと説明して上げる。

 何週間も、何ヶ月も、ずっと篠塚先生を遠くから見守っていた僕は、いよいよ再会の段取りを考えた。

 電話では、もう何度か相談と称して話をしていたけれど、僕の気持ちはもうそれだけでは我慢出来なくなっていた。

 校長の事件も、それ程騒がれなくなっていたから、警察の方の心配もなくなったしね。

 会う前に、先ずいろいろ用意しなければならない物があって、それを揃えるのに結構手間取ってしまったんだ。

 何を用意したか判る?

 今迄の話の流れから、先生にもだいたい想像はつく筈だけどな。

 答えは、よく切れる包丁と、鋸。それと、気を失って貰う為のホルマリン。

 包丁はね、問屋街にまで行って、大きいのから小さいものまで六本も揃えたんだよ。

 お陰で、一ヶ月のバイト代がきれいに消えた。

 でも、少しも惜しいとは思わなかった。

 だって、僕にとって、大切な人の為にそれだけの物を揃えたんだから。

 鋸だって、ホームセンターの人が、これは職人さんも使う程のやつですよって奨めてくれたのを買ったんだ。

 スポーツバックの中に、揃えた物一式入れて、僕は篠塚先生の住むアパートへ向かった。

 そうそう、ロープも忘れてなかったよ。使い方は、後で判るよ。

 どう、感心した?それ迄と違って、ちゃんと計画的に事を進めていたんだから。

 ここ迄読んでいて、多分先生は何故?て思ってるでしょ。

 お見通しさ。つまらない常識に縛られた人間なら、みんなこう思うんじゃない?

 どうして殺そうとしたの?てね。




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