破   壊
 たくさん想像してた。

 驚く顔、喜ぶ顔、困った顔、泣いた顔。

 頭の中の篠塚先生は、どの顔も美しかった。

 実際は、たいした事なかったけどね。

 そこは、正直言ってすごくがっかりした部分だったな。

 なあんだ、結局この人も校長なんかと変わらないんだって。

 だってさ、ボロボロ涙流して、化粧はぐちゃぐちゃになるは、鼻水は垂らすはで醜いったらなかったんだぜ。

 同じ涙を流すんでも、歓喜の涙っていうか、篠塚先生なら恍惚とした表情で死を迎えてくれると思ったんだけどなあ。

 そのせいか、身体をバラバラにしているうちに、ちょっと飽きちゃって、最後は雑になっちゃったね。

 どう処分したかって?

 いろいろ考えた中で、一番いい方法に辿り着いたのが、挽き肉みたいにしてトイレに流す事だったんだ。

 内臓や肉の部分はそれで完璧だったけど、結構面倒だったのが骨。

 篠塚先生の骨は割と硬い方で、細かく砕くのに、かなり力が必要だった。

 この世からきれいに篠塚先生を昇華させて上げたわけだけど、一つだけ、僕は彼女の証が欲しくて処分しなかったものがあるんだ。

 何だと思う?よく、変質者みたいな奴は、性器だとかを切り取って、それを大事にするっていうけれど、あんなグロい物にどうして執着するのか、僕には理解不能だね。

 僕が手元に残した物は、彼女の心臓だったのさ。

 一番最初に、心臓を取り出し、ビニール袋に入れ、彼女の部屋にあった冷蔵庫のフリーザーに入れて置いたんだ。

 全身をきれいに処分仕切る迄、8時間位掛かったから、終わった頃には新鮮な状態で冷凍になっていた。

 彼女の命の根源であった心臓を僕の物に出来た事は、この上無い喜びではあったけど、それも永遠に想い続ける事は出来なかった。

 ねえ、人の喜びって、どうして直ぐ消えてしまうのさ。

 憎しみは、ずっと残るのに。




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