破 壊
手紙はまだ続きがあった。
拘置所で直接話した時程、私の心は揺らがなかったが、それでも、その夜はそれ以上先を読む気にはなれなかった。
文字という事もあって、接見していた時の圧迫感は受けなかったけれど、彼の文章は、時に血の臭いと色を感じさせた。
テーブルの上のワインは空だ。
無意識のうちに、飲み干していた。
それ程アルコールに強くない私は、ワインの酔いからか、手紙に悪態をついていた。
「ホラー映画の観すぎで脳みそが腐ってんじゃないの?」
残りの便箋は、ざっと見ても、まだ十枚近くある。
封筒の中に戻そうとした時、背中に視線を感じた。
息子の大輔が自分の部屋から出て来ていた。
「どうしたの?」
「喉が渇いたんだ」
そう言って冷蔵庫に向かう息子を、私は後ろから抱きしめようとした。
「こら大輔、最近ママに少し冷たいぞ」
「……お酒、臭い」
無表情でそう言った大輔は、私の腕からするりと抜け、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、ペットボトルに直接口を着けた。
気まずくなった雰囲気をどうにかして変えようと、
「ねえ、ギター、ママと一緒に買いに行かない?」
と声を掛けた。
「いいよ。そんな時間無いでしょ。それより、誰からの手紙だったの?」
見られていた。
うろたえた私は、思わず声を荒げてしまい、仕事の手紙だからあなたに関係無いわと言ってしまった。
息子の表情を見て、しまったと思ったが、遅かった。
歳より大人びた端正な顔立ちが、鋭利なナイフのように思えてしまった。
拘置所で直接話した時程、私の心は揺らがなかったが、それでも、その夜はそれ以上先を読む気にはなれなかった。
文字という事もあって、接見していた時の圧迫感は受けなかったけれど、彼の文章は、時に血の臭いと色を感じさせた。
テーブルの上のワインは空だ。
無意識のうちに、飲み干していた。
それ程アルコールに強くない私は、ワインの酔いからか、手紙に悪態をついていた。
「ホラー映画の観すぎで脳みそが腐ってんじゃないの?」
残りの便箋は、ざっと見ても、まだ十枚近くある。
封筒の中に戻そうとした時、背中に視線を感じた。
息子の大輔が自分の部屋から出て来ていた。
「どうしたの?」
「喉が渇いたんだ」
そう言って冷蔵庫に向かう息子を、私は後ろから抱きしめようとした。
「こら大輔、最近ママに少し冷たいぞ」
「……お酒、臭い」
無表情でそう言った大輔は、私の腕からするりと抜け、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、ペットボトルに直接口を着けた。
気まずくなった雰囲気をどうにかして変えようと、
「ねえ、ギター、ママと一緒に買いに行かない?」
と声を掛けた。
「いいよ。そんな時間無いでしょ。それより、誰からの手紙だったの?」
見られていた。
うろたえた私は、思わず声を荒げてしまい、仕事の手紙だからあなたに関係無いわと言ってしまった。
息子の表情を見て、しまったと思ったが、遅かった。
歳より大人びた端正な顔立ちが、鋭利なナイフのように思えてしまった。