破   壊
 母親の愛人だったという男を特定するのにも、かなりの労力を費やした。

 彼は、その当時、まだ母親と同居していたが、彼の住民票を調べてみると、おもしろい事に母親とは別になっていた。

 両方の住所を調べ、当時の生活状況を探って行くうちに、更に複雑な家庭環境である事が判って来た。

 彼の母親は、父親が病に倒れた直後から、ホステスの仕事をするようになっていたらしい。

 ただ、その仕事も、一年ばかりで辞めている。

 母親の収入が暫く無い状態で、住民税や所得税等が何年も払い込まれていないのにも関わらず、近所の話を聞いてみると、生活は割と派手だったようだ。

 高校、大学と、筧 亮太は奨学金で通ったが、別に福祉の世話になった訳ではない。

 この時の奨学金は、これ迄、たったの一円も返還されていない。

 ある時期、胡散臭げな会社からの所得申告があったが、調べてみると、その会社はダミー会社のようで、風俗等で働く女性達の為に、在籍だけを受け持っていたと判った。

 大元は、ソープランドを経営している会社だ。

 更に聞き込み調査をして行くと、彼の母親は、自らデートクラブを経営していた事が判った。

 しかも、自分も客を取っていたらしい。

 この事は、在籍していたと思われる、ソープランドの元同僚から聞き出した。

 『クズ野郎』と書かれた母親の愛人というのが、一緒にデートクラブを経営していた男じゃないかと判明したのは、彼が鑑定留置となって二ヶ月が過ぎた頃だった。




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