破   壊
大   輔
2009年〇月Χ日曇り

 あの夜以来、ぼくは自分の中に妙な生き物が生まれたような気分になった。


 ママの手紙を盗み読みしたあの夜からだ。


 どうしてその手紙を読みたくなったのか、正直、自分でも判らない。


 何かを説明するって、あまり得意じゃないから。


 だから、今ぼくの心の中で少しずつ大きくなっている妙な気持ちも、言葉では説明出来ない。


 何かをしたいとか、そういう具体的な事なのかも判らない。


 その手紙を読んだ時、ぼくは書いた人をこの目で見てみたいと思った。


 怖いもの見たさかも知れない。


 名前を見たら、新聞にも載った人殺しだ。


 ママはその人の弁護士をしてる。


 一度も、自分の仕事の話をしてくれた事がない。


 今度の事だって、聞いても絶対教えてくれないだろう。


 ぼくにだって、ママの事を知りたいって気持ちはあるのに。




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