破   壊
 色付きの夢を生まれて初めて見た。

 それも、全てに色が付いていたわけではない。

 はっきりと見えた色が、赤だった。

 初めはぼんやりとした色合いだった。

 少しずつ私の五感がその色を捉えて行く。

 はっきりと感じた。

 それは……

 血。

 滴り落ちる血の色。

 鮮血だけが、私の視界に広がっていた。

 血に染まった塊が蠢く。

 目を逸らしたいのに、意に反してその塊が近付いて来る。

 はっきりと姿形を認識した瞬間、私は精一杯の悲鳴を上げていた。

 何度も悲鳴を上げた筈なのに、夢の世界は、まるで無声映画のようで、一切の音が掻き消されていた。

 血の塊は、切断された頭だった。

 顔を見ると……

 再び悲鳴を上げる。

 やはり無音の世界……

 だ、大輔!

 手を伸ばそうとした時、自分の両手が何かを掴んでいる事に気付いた。

 意識が両手に行く。

 何度目かの悲鳴……

 私の両手は血に染まり、右手に見た事も無いような大きな包丁を握っていた。

 そして、左手には、血を滴らせた腕が……

 そう、切り落とした大輔の腕があった……





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