破   壊
 彼との数回に渡った面談の内容と、彼からの手紙から引用し、殺害時の心情を説明して行った。

 淡々と読み上げていたつもりだったが、感情の高ぶりは、自分でも判る位、読み上げる口調に表れていた。

 傍聴席は水を打ったかのように静まり返り、裁判員達は、もはや聞くに堪えないという眼差しを私に送っている。

 敢えて、私は彼の残虐性を伝えるようにしていた。

 彼が、いかに冷酷無比な殺人者であるかを、この場に居る全員に伝えたかった。

 尊い命を命とも思わず、理由も無く殺害し続けた彼。

 私の口ぶりは、弁護人のそれから逸脱し始め、まるで被害者の肉親であるかのような攻撃的な言葉へと変わっていた。

 彼は、まだ私を見つめている。

 微かに微笑んで……





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