破   壊
 中学の卒業式の帰りだったんだけど、通学路のあちこちで三年間の別れを惜しむ奴らが溢れててね。

 学校の中だけにしとけよって思ったよ。

 即席のカップルみたいのまで出来ちゃってさ、別に中学の卒業式位でお涙頂戴はないだろう。

 真っ直ぐ家に帰るのもつまらなくて、近くの河原に向かったんだ。

 天気の良い日とか、よく河原で昼寝したりしてたから、その時も一休みするつもりだったんだ。

 三月にしては、少し陽射しが強かったから、橋の欄干の下にでもと思って行ってみると、先客が居たんだ。

 男と女。

 草陰から、うちの学校の制服が見えた。

 気付かれないように、近くに寄ってみると、驚いたね。

 同じクラスの女の子と、他所の学校の男子が抱き合ってたんだ。

 男は、多分高校生だったかな。

 何が驚いたかって、その子、そういうのクラスでも一番イメージが湧かないっていうか、まるで小学生みたいな女の子だったんだぜ。

 それがだもん……

 その子の名前?

 思い出したくもない……

 だから教えない。

 とにかく、僕はその場に立ち尽くしてしまったんだ。

 身体が自由にならないって感覚、判る?
 目は釘付けさ。

 でも、二人に見られてはいけないという意識はあったから、見つからないように隠れていたけどね。

 そのうち、二人が始めちゃったんだ。

 何をって?

 そんなの言わなくても想像つくでしょ。

 突然、僕の心の中に、吐き気のような、なんて言うのか、とにかく得体の知れない真っ黒いものがムクムクと湧いて来たんだ。





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