ひとっ飛び
授業が終わると、僕は正門から、唯は裏門から出ていく。
僕は時計回り、彼女は反時計回りに進んでいき、ちょうどその中間にある小さな橋の上で僕たちは待ち合わせた。
そこから、唯は僕の自転車の荷台に腰掛け、2人乗りで1キロほど離れた公園へ向かう。
住宅地の間にある、『こんなんじゃ子供たちは不満だろう』と感じられる小さな公園だった。ここまでの道乗り、同じ高校の生徒に見つからないように注意しながら進んできた。
砂場に滑り台。そして、木製の屋根が取り付けられたベンチ。そこに座り、僕たちは本当にとりとめのないことを話した。
残念ながら、彼女と話した内容をほとんど今では覚えていない。それは一度、彼女との記憶を抹消しようとしたことがあったからである。
覚えているのは、僕と唯が並んでベンチに座っていると、五歳くらいの男の子が僕たちの背後でしゃがんでいたことだ。
「何をしているの?」と、僕が尋ねた。
し!っ、と男の子が唇に人差し指を押し当てて言う。
「お兄ちゃんたち、動かないで。いま、かくれんぼしてるんだ」
僕と唯は、顔を見合わせて笑った。
僕は時計回り、彼女は反時計回りに進んでいき、ちょうどその中間にある小さな橋の上で僕たちは待ち合わせた。
そこから、唯は僕の自転車の荷台に腰掛け、2人乗りで1キロほど離れた公園へ向かう。
住宅地の間にある、『こんなんじゃ子供たちは不満だろう』と感じられる小さな公園だった。ここまでの道乗り、同じ高校の生徒に見つからないように注意しながら進んできた。
砂場に滑り台。そして、木製の屋根が取り付けられたベンチ。そこに座り、僕たちは本当にとりとめのないことを話した。
残念ながら、彼女と話した内容をほとんど今では覚えていない。それは一度、彼女との記憶を抹消しようとしたことがあったからである。
覚えているのは、僕と唯が並んでベンチに座っていると、五歳くらいの男の子が僕たちの背後でしゃがんでいたことだ。
「何をしているの?」と、僕が尋ねた。
し!っ、と男の子が唇に人差し指を押し当てて言う。
「お兄ちゃんたち、動かないで。いま、かくれんぼしてるんだ」
僕と唯は、顔を見合わせて笑った。