ひとっ飛び
手を繋いで、2人は吉村家のドアを通り抜けた。2階に僕の部屋があった。

唯は「殺風景ね」と言う。僕は部屋にゴチャゴチャと物を置くのは嫌いだった。

「何か飲む?」僕は言った。「コーヒーか紅茶、オレンジジュースしかないけど」

「ありがとう。じゃあ…紅茶」

わかった、と僕は手を挙げ、階段を降りて1階のキッチンでコーヒーと紅茶を淹れた。

おぼんにカップを2つ載せて部屋に戻ると、唯は体操座りをしてボーっとしていた。

「どうしたの?」と僕は聞く。「紅茶持ってきたよ」

彼女は姿勢を崩し、あひる座りをした。小さな丸いテーブルの上に置いたカップをひと口すすり、彼女は言う。

「吉村君、わたし…」
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