ひとっ飛び
次の日。

学校の廊下を歩いていると、生徒たちの僕を見る目が変わっていることに気づいた。

『あいつが吉村?』

『そう。3組の宮原ってやつと付き合ってて、別れさせられたんだってよ』

『マジかよ』

僕と唯のことが、学年全体に広まっていたのだ。

人の噂話が何よりも好きな高校生たちは、誰と誰が付き合っているという情報が特にお気に入りらしかった。

自分の教室に入って自分の席に着いたとき、仲のいい友人が話かけてきた。

「吉村、お前昨日何かあったの?」

わかってるくせに、とうんざりしながら、僕は視線を合わせずに、

「ちょっとね」

と返事した。

学校は、僕にとって居心地の悪い場所に変わってしまった。

廊下を歩いているときに、生徒たちが自分を好奇の目で見るのだ。

僕が視線を向けると、さっ、と目をそらすくせに。

移動教室のとき、他クラスの口の悪い奴に、

『調子乗りやがって。ざまあみろ』

という意味の言葉を言われたこともある。
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