ひとっ飛び
彼女の姿を見て、僕の中で沈殿していた記憶の欠片がユラユラとうごめいた。


鼓動が高まっていく。

「久しぶりですね」

「うん…どうしてここに?」

「近くに私のおばあちゃんの家があって。そこから短大に通ってるんです。今日は家にお客様が来るから、いい珈琲豆を買ってこようと…」

そういえば、さっき店の奥で電話が鳴っていた。

あれはきっと彼女だったんだろう。

今になってやっと、朝倉が二杯目のカフェオレを作った理由がわかった気がする。

あいつは、本当に…。
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