ひとっ飛び
「なあ朝倉、気を遣わなくていいよ。もう3年も前のことだし」

そう言うと、朝倉はやっと僕の目を見てくれた。

「そうか。…宮原の婚約者、知りたい?」

僕は黙ったままでいた。朝倉は、それを肯定と受け取ったのか、僕の『ポーズ』を見透かしたつもりでいるのか、

「あいつの親父の会社…太田物産だっけか。そこの上司の息子らしい。確か、常務とか」

「そうか。…なんで朝倉が知ってんの?」

「多香子いたじゃん、葉山多香子。あいつ、太田物産に就職したんだよ。あいつからメールで聞いたんだよ」

朝倉は女友達が多かったから、卒業後も様々な元クラスメートと連絡を取り合ってるんだろう。

僕はあまりメールや電話が好きじゃなかったから、こうして地元に帰るたびに、朝倉からいろんな話を聞いていた。
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