ひとっ飛び
突然、パラパラという音が聞こえてきた。雨が降り出したのだ。

僕と朝倉は、サッと窓のほうに視線を向けた。

雨はすぐに勢いを増していき、ザーッという単調なBGMに変わる。

店の前の通りを歩いていたサラリーマンが、持っていたカバンを傘代わりにして走り出した。

「自転車で来たんだろ?帰り傘貸そうか?」

「ああ…悪い。頼むよ」

その後、しばらく僕たちは無言でカフェオレを舐め続けた。

朝倉もきっと僕と同じことを考えているだろう。高校時代のことだ。本当にいろんなことがあった。

PLULULU…
突然店の奥で電話が鳴った。

「ちょっと待ってな」

と朝倉が言い、椅子を引いて店の奥へ消えていった。

僕はテーブルの上に広げたレポート用紙をカバンにしまった。今日は無理だ。やる気が起きない。

何故?

恐らく自分ではわかっている。わかっているが、それを具体的な言葉にしないことで、今まで自分を保ってきたのだ。

朝倉が戻ってくるのを待ち、残り少なくなったカフェオレを味わいながら、僕は高校時代を回想していた。
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