【完】イケメン生徒会長は俺様!?
だけど正直……今更逢いに行きたいなんて思わない。



逢いに行ったとしても、どんな顔をして逢えばいいのか分からないんだ。



だから、今更逢いに行くのが怖い。



父さんと母さんを亡くしてから、もう10年以上も経つ。



あれから一度も父さんと母さんに逢いに行かなかった俺が……今更逢いに行ったってもう遅いに決まってるんだ。



父さんと母さんだってきっと、俺のことなんかどうでもいいに決まってるんだ。



今まで一度も、逢いに行かなかったんだから。



きっと……俺のことなんかどうでもいいに決まってるさ。



俺は今まで……一度も両親のことを詳しく聞いたことがなかった。



一度も、聞こうとしなかった。



……いや、違う。



俺はただ、両親のことを聞くのが怖かっただけなんだと思う。



聞いてしまったら……父さんと母さんは死んだんだっていう事実を受け入れなきゃイケなくなるから。



それがイヤだったんだ。



あの頃の俺はきっと……両親が死んだって事実を受け入れたくなかったんだと思う。



それを受け入れたら……俺はもう独りぼっちなんだって実感することになるから。



"独りぼっち"なんだって思いたくなかったんだ。



だから今まで、一度も聞けずに居たんだ。



あの頃の俺はきっと……独りぼっちになるのがイヤなだけだったんだ。



きっと……両親が死んだという悲しみと、両親が居ないって寂しさを味わいたくなかっただけなのかもしれない。



だから今まで、なにも聞かなかったんだ。



だけど……初めて俺に大事な"家族"が出来た。



守りたいと思える人が。



だから、この幸せをずっと大切にしていきたい。



俺を産んでくれた両親のためにも―――…



両親のことなんか全然覚えてないけど……産んでくれたことにはすごく感謝してるんだ。



もし俺が産まれてなかったから……俺は美綺に出会えてなかったし、子どもにだって恵まれなかった。



だから、俺を産んでくれた両親にはすごく感謝してるんだ。



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