【完】イケメン生徒会長は俺様!?
流二はパパになったよって。



あたし、母親になったよって。



あたしはケータイを開くと、アドレス帳からある人の名前を表示させた。



「ふう……」



呼吸を整えて、表示された番号をゆっくり押した。



プルルルッと呼び出し音が鳴り響く。



そして数秒後―――…



「もしもし、美綺か?」



懐かしいあの人の声が耳に届いた。



「うん……あたし」



久しぶりに聞くあの人の声に、ちょっとだけ緊張する。



「……どした?美綺から掛けてくるなんて珍しいじゃん」



電話の相手は……昔の恋人の拓哉。



「うん……別に大したことじゃないんだけどさ」



あたしが喜びを今一番伝えたい人は、拓哉だった。



幸せだと感じた時。



……ううん。幸せって感じた時、この喜びを一番に伝えたい人はって考えた時、一番最初に頭に浮かんだのは拓哉の顔だった。



あたしの背中を押してくれたのは、拓哉の一言だった。



「お前なら、絶対に幸せになれる」



「お前には大切なヤツが居るだろ?……愛しいと思う、大切なヤツが」



そう言ってくれた時の拓哉の顔は……今までにないくらいとても優しい笑顔を浮かべていた。



その顔を見た時……拓哉はあたしの幸せを本気で願ってくれてるんだ。



……そう思った。



拓哉のあの言葉がなかったら、あたしはきっとまだ拓哉のことを許してはいなかったと思う。



あんなことになったせいで……あたしの人生は奈落の底に落ちて、今までにないくらいすごくショックだった。



こんな体になってしまった自分を、いっそのこと嫌いになりたかった。



出来るなら、あの頃に戻りたい。



……そう思ったことだってあった。



最初は拓哉のことを恨んだし、すごく憎かった。



あたしのことを捨てたから。



あたしの妊娠を知った途端、あたしから離れて行ったから。



あたしを見捨てて、他の女の所に行ったから。



……だから憎くて仕方なかった。



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