distortion

最初の絆

武蔵のマネージャーのバイトを始めて3ヶ月。

アイツもようやく使い物になってきたかなー感がしてきた。



そりゃあそうだろ。

3ヶ月間同じネタ使ってれば嫌でも覚えるだろう。


それで覚えてなかったら逆にどうしたら覚えないのか聞きたい位だね。


まあ、俺が付き人やってやったおかげでもあるけどな。


もし何かの大会で賞金貰えたら奢らせよう。



事務所の人から聞いた話ではもうすぐデカい大会があるらしい。


武蔵はエントリーするぞぉ!とか何とか張り切ってはいるけどね。




ハッキリ言って無理だろ。



「おはよう!ごっちゃん」


相変わらず脳天気感満載の武蔵。


「だからごっちゃんはやめてって」


「だって他に何の呼び方ある訳?真輝だからまーくんとか?」


「却下」



まーくん……。
確かに好きな奴には呼ばれたい名前だけど。

コイツには呼ばれたくねぇ!!


「つまんねー事言ってないでとっとと練習するぞー。金かかってんだからな」


「はい……」



そう、この今いる場所は金がかかっている。

武蔵の家の最寄り駅近くにあるカラオケボックスなのだ。

事務所にも毛が生えたような物置小屋みたいな稽古場もあるにはあるのだが、先輩ミュージシャンが優先だから武蔵みたいな下っ端はなかなか使わせてもらえない。

だからといってコイツは上がり症だから公園や路上での練習じゃあ埒があかないしな。



「さて!発声練習にまずは一曲歌うかなーと」



俺は思わず阿呆な発言をした武蔵の頭を叩いてしまった。


「馬鹿!カラオケなんてどうでもいいから早くエントリー曲の練習やれよっ!」


「はい、すいませんでした」


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