distortion
よくわからない回答に俺はイマイチ首をひねった。
武蔵が何となく言わんとしてる事はわかるんだけど。
「もっと簡単に言ってくんねー?俺、馬鹿だからわかんないよ」
「んーだからぁ、事務所を変わるつもりもないし、マネージャーを変えるつもりもないし、ましてや高級マンションに引っ越して生活するつもりもないって事!」
武蔵は言い終わると微妙に顔を赤くして俯いてしまった。
そんな姿を見るとちょっと可愛いと思ってしまう。
「バーカ!決勝出ただけじゃお金貰えません」
「あれっ?そうだったっけ?」
「はいはい、そんなんじゃ初戦敗退だな」
「えーっ!そんな事ないよぉ」
ふざけてじゃれていたら、武蔵の動きがピタリと止まった。
「真輝、俺ね」
「んー、何?」
「俺、頑張るからね」
「えっ」
いつになく真剣な表情。
こっちもふざけた姿勢じゃいかんなと思って思わず姿勢を正してしまう。
「真輝がマネージャーやってくれてからさ、なんか本気でやる気出てさ、毎日楽しいんだ。前にも、マネージャーさんいてくれたんだけど…なんか事務的であんまり上手くいかなかったし」
「そんな事……」
「だから、今度の大会は自分の為なのは勿論だけど真輝の為にも頑張るよ」
「………あ」
「ありがとうね。相変わらずグズで才能ない奴だけど、これからもよろしくお願いします」
そう言ってペコンと頭を下げた。
ヤバいよーっ!
駄目なんだよ!
俺、こういうの弱いのに。
あぁ、もう泣けてきたし…。
「真輝?」
心配そうに俺の顔を覗き込んだが、さすがに涙を垂らしてる顔を見られる訳にはいかなかった。
「何でもねっ!」
「もしかして泣いてるの?ごめん……俺が変な事言ったからだよ、な」
「いや、違う……」
「謝るからさ、泣き止んでよぉ」