distortion
「ほら、そろそろ行くぞ」


「もう時間なの？」

「いや、集合5分前だけどさすがに遅れたらマズいだろ。グズグズすんなよ」


「わかった」


集合場所に行くともう何組ものアイドルやソロの奴等が並んでいた。

俺がいていいのは受付までだから一緒に並んではやれない。


「頑張ってこいよ？落ち着いたら出来るし、な」


最後に武蔵に言葉をかけてやって安心させてやる。

武蔵も黙って頷き、笑って手を振ってそれに応える。




武蔵と別れた俺は武蔵の演技を観ようと客席についた。

案外、武蔵の言う通り平日なのに人は結構いる。
満席状態ではないが空席を探すのには多少苦労した。



舞台ではテレビで見た事のあるアイドルが簡単なMCを交えながら出演者を紹介していた。


審査員は多分一番後ろの机に座っている4～5人で固まってる連中だろう。



歌の制限時間は5分。

制限時間ギリギリで終わるとまずいので、だいたい15秒前に終わるように設定はしてある。

時間を超えてしまうと演技途中でもそのまま強制終了になる。


審査は自分の持ち歌じゃなくても可能。

採点方法は審査員の評価プラス会場のお客さんの総合点数だ。


だったら出演者は沢山自分の信者や身内を呼べばいいのだが、そう簡単にはいかないらしい。


やっぱり審査員の評価や事務所絡みが一番みたいで、あくまでも1評価にすぎない。




出演者のデータを見ているが、武蔵の出番はラストから2人目。


それまでは他の出演者を観ていることにした。




舞台観るのなんて高校先の時に好きなアーティストのライブを観に行った以来だ。

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