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救済命令

武蔵の結果は……惨敗だった。


いくら容姿が良くても事務所が力不足なのとやっぱり実績が殆どないのが敗因。

こればかりは武蔵を責める訳にはいかない。



「ごめん…真輝」


「お前のせいじゃないよ」


肩をがっくり落として今にも泣きそうな顔の武蔵。

俺は黙って抱きしめた。


「よしよし、武蔵は頑張ったんだからさ。あんまり落ち込まないの」


「まさ……き」


武蔵はギリギリまで泣くのを我慢してたみたいで背中をさすってやった途端に泣き出してしまった。


「ほら、泣くな。今日は俺も一緒にいてやるから、な?」


「真輝っ…ん。あっ……りがと」


しゃくりあげながら武蔵は俺の首筋にすがって何とか言葉を発した。


「あんまり首筋にしがみつくなよ…くすぐったい」


「だってさ……真輝が」


「俺がなんだよ」


「なんか恋人みたいでつい……」


「ばーーか!誰が恋人だって?」








公開オーディションも終わって、慌ただしい雰囲気だったのもいつもの日常に戻った。
武蔵は相変わらずオーディションで落ちまくりの日々だ。


結局、うちの事務所からは準決勝に行った先輩はいたがそれ止まりだった。



「後藤君、ちょっといい?」


今日は珍しく社長がいたんだけど神妙な声で呼び出された。


「はい!今行きます」


「今日は後藤君に話があったんだけど」


「あ、何でしょう」

ヤバいな、クビかも……。
武蔵で結果出せなかったからなぁ。


しかし、返ってきたのは別の返答だった。


「後藤君さぁ、歌やんない?」


「へっ?」


「だから、歌やらないかって」


「何で俺なんです」


いきなり歌って……。


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