distortion
「最近、出ずっぱだからコンタクト入らなくってさ」


全然奴は困ってなさそうに楽しそうに答える。



「出ずっぱだって言ってもトークだけでしょ?座ってるだけなんだからまあいいじゃない」



余裕そうに嫌みの一つでも言ってやらなきゃ気が済まない。


当然相手はムッとした表情に変化していく。



サンドラの片割れ

後藤真輝


今一番自分が消えて欲しい相手。


「あ、いたの福ちゃん?」


「わかってたんだろ?ワザとらし」

「福ちゃん…止めなよ」


薫ちゃんが俺らの間に割って入る。


「お願いだから喧嘩しないでよ」


「大丈夫。そんなんじゃないよ」


後藤がポンポンと薫ちゃんの頭を軽く叩いた。

「悪いけどさ、俺ら最後の打ち合わせあるから出てってくんない?」


打ち合わせなんてない。


後藤が来て幾分嬉しそうな顔をしてる薫ちゃんから早く遠ざけてしまいたい。


「まだいいじゃんか。それとも薫ちゃん俺に貸してくれるの?」


阿呆か!?

いい加減にしろとぶん殴りたい気持ちになった時にタイミング良く救世主が現れた。



「おい真輝、探したぞ。」

「武蔵…」




救世主と言うのは後藤の相方でもある武蔵。


大きな体を小さく申し訳ない程度に縮込ませて、ただでさえ狭い楽屋に入ってきた。


「なんだよ、もう出番は終わっただろうが。次の収録まではまだかなり空き時間あんだろ」


どこまで横柄な態度なんだか。


大事な相方な筈なのに、大事に扱ってない事位すぐにわかる。


いくらテレビの中で仲良しアピールしたって、近くで見ればまやかしだって見抜ける。


「でも俺、次のトーク心配だし…一緒に考えてくれると嬉しい」



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