幸せそうな微笑み
和泉と出会ってから毎週水金は
ピアノを聴かせてもらっている。


和泉の音を聴いたり俺が奏でたり。


最初は音だけだったけれど。


今ではクラスでこんなことがあった、
昨日あんなことがあった、などと
会話もするようになった。



和泉と過ごす時間は唯一俺の心を
満たしてくれる。


優しいピアノの旋律、穏やかな表情の和泉、
柔らかい声、時折見せる笑顔と真剣な顔。


甘ったるい声や甘えた表情ではなく
全て和泉自身のものだ。


俺は今までそんな人間を望んでいた。





この気持ちが――


母親への未練なのか


彼女への愛なのか





それはまだ分からないのだけれど
< 12 / 29 >

この作品をシェア

pagetop