幸せそうな微笑み
「ピアノ、なんで始めたんだ?」


「お母さんがね、大好きなの。
でも自分じゃ弾けないからって私に。
お父さんはヴァイオリンが得意で妹が
教わってる」


幸せそうな、笑顔。


「へええ。感謝しないとな。
おかげで和泉のピアノ聴かせてもらえる」


「神宮君は?どうしてピアノを?」


「俺のきっかけも母親。
幻想即興曲(嬰ハ短調[遺作]作品66)が
好きでさ。
自分で演奏するのも好きで沢山聞かされた。

和泉の奏でる音が母親の音にそっくりで…
泣いちまったくらいだよ、俺」


あの日、準備室で聞いたのは
幻想即興曲だった。


「両親が離婚しててさ。行方不明、っつうか。
まぁ今更会ってどーするとも思えないけど」


「…そっか」
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