幸せそうな微笑み

家族

「あら、おかえりなさい。聡」


「ただいま。詩織(シオリ)さんピアノ弾く?」


「今は弾かないわよ。どうして?」


「俺が…弾いても良い?」


目がまんまるだ。


「聡が…?勿論良いけど…」


「ありがとう」


ピアノの部屋に向かおうとしたら
呼びとめられた。


「待って、聡のピアノ聴かせて」


俺が悩んでいるとにっこり微笑んで、


「上手じゃなくても良いのよ。
聡のピアノを聴かせて」


そう言われては仕方ない。


「分かった。でも少し練習したいんだ。
満足できたら来るからそれまで待ってて」


「分かったわ」





ここには初めて入った。


どうしてもここだけは嫌だった。


なのに自分から進んで入るとは、な。
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