Accusation
部屋の電気を付けて、鞄を無造作に隅に放り投げた後、竹田は先程の白い封筒をしげしげと見つめてみた。何の模様も無い地味な封筒だ。

――これ、多分手紙…だよな? んー、ちょっと中を見てみるか。
他人宛ての手紙を覗くのは余り良い趣味とは言えないが、まあ今更当人に届けられる物でも無い。

竹田は己の行為に対する罪悪感を抑え込む為に、勝手な理屈を頭の中で考えながら封筒の上部を指で破いた。




「痛っっっ!!!」

突如、指先に鋭い痛みを感じて、竹田は思わず封筒から手を放した。ポタポタと落ちる赤い液体がベージュの絨毯にじわりと染みていく。

「……血?」

呆然としながら痛みの残る右手に目を遣ると、人差し指に鋭利な一文字の線が走っており、そこからパクパクと呼吸するかの様に血が噴き出ている。

漸く怪我をした事に気付き、慌ててそばにあったティッシュぺーパーを人差し指に押しあてた後、救急箱の中からバンソウコを取り出して傷口に強めに巻いて止血した。

竹田は先程の自分に何が起こったのか理解出来なかった。取り敢えず怪我をしているのは事実なので、足元に落とした破りかけの封筒を今度は慎重に手にとって中を覗くと、キラリと光る物が目に入った。

それは剃刀の刃だった。しかもご丁寧にも、中に落ちない様にテープで封筒の上部に固定してある。

明白過ぎる悪意に寒気を感じながらも、封筒の中に入っていた3枚の便箋を取り出して目の前に広げてみた。そして思わず息を飲んだ。

そこにはただ一つの単語だけが、隙間なく全ての便箋にびっしりと書き綴られていた。





『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』

遠目にも一目で分かる筆圧の強さが、差出人の宛先の男への想いを更に忠実に表現していた。
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