Accusation
Approach
S友生命ビル10Fのオフィス。
午前7時の時点で高梨は既に席について、PCで書類を作成中だった。

ふうと軽く息を吐きながら、右手でとんとんと左肩を叩く。どうもパソコンを使って仕事をすると肩が凝ってしょうがない。

「あら、おはよう。今日も早いわねー」

清掃の為に部屋に入ってきたアルバイトのおばちゃんが、高梨を見付けて挨拶してきた。

「おはようございます」

高梨も軽く会釈をして挨拶を返した。

「こんな時間から来るなんて、いつも本当、感心よねー」
「いや、単に仕事が遅いだけですよ」

本来の会社の始業時間は午前9時だが、高梨は事務仕事の際はいつも二時間前には職場に出勤していた。【やれる仕事はすべてやる】がモットーの高梨にとって、特に朝の時間は幾らあっても足りない物だった。

「でも、本当に感心よ」
「はは…」

返事もそこそこに、高梨の視線は既にパソコンの画面に向いている。

8時間位になると、次々と職場の上司や先輩・後輩が次々と出社して来た。

「おはようございます」

出社してきた竹田が高梨に声を掛けた。
竹田の座席は高梨のちょうど真後ろの位置にあたる。

「おお、おはよう」

高梨は首だけ振り向いて、挨拶を返した。

「んっ? お前、何か顔色悪いな。それにその指どうした?」
「えっ? いや、そんな事ないですよ。あっ、ああこれはちょっと…」

不意に指の傷の事を質問されて、竹田は慌てて指を後ろに隠す仕草をした。

「昨晩ちょっと包丁を使ったら怪我してしまって……気にしないで下さい」
「ふーん、まあそれなら別に良いけど」

高梨は何か後ろめたそうな竹田の態度が気になったが、触れない方が良いのかもと思い、再びパソコンに向かった。


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