夏の桜
愛しさと恐怖
 学校が始まった。その事をハクに話すと、とても淋しそうな顔をしていた。
 ハクはホントに俺に懐いてるんだな。そう思うと、嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。
「駆!帰ろうぜ」
 クラスの友達が誘ってきた。
「おう」
 こんなのも久しぶりだな、そう思いながら友達数人と帰っていると、横の茂みにチラッと何か白いものが見えた。
 見ると、ハクが茂みから小さく顔を出している。
 俺はふっと笑って、小さく手招きをした。
 友達と喋りながら、チラチラとハクの方を見ると、小走りに追いかけてきたり、たまに止まって俺の方を見たり、とハクなりに距離を保ちながらついてきている。
 俺はそんなハクが可愛くて、つい笑ってしまった。
「何笑ってんだよ」
 友達が訝しげに俺を見ている。
 俺は何でもないと言って、また歩いた。
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