【短編】あたしとバカと自縛霊
あたしが初めて幽子さんを紹介されたのは数ヶ月前の、梅雨の季節がやっと終わった薫風の頃だった。


也久に呼び出されたあたしは屋上にてまごついていた。


「紹介する。彼女は幽子さん。学校に取り憑く自縛霊だ」


也久の視線を促す手の先にはフェンス越しに透過する澄み切った青空しか見えない。


初めてではない。


初めてではないけれど、困惑はある。


也久の『見える』ってのにはある程度理解してるけど、紹介まではいらないだろう…。
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