【短編】あたしとバカと自縛霊
屋上までの最後の階段を前に也久がいない事を確認する。


逆説で言えば屋上に出たのは間違いなく也久だ。


時期が時期だからか最近の薄暮は早く、踊場の大窓から差し込む赤光があたしの影を伸ばす。


今、屋上にいるのは也久。それと幽子さん。


二人きり。夕景。屋上。


告白にはおあつらえ向きなのが何とも悩ましい。


あたしはいつの間にか手を胸の前に合わせていて、傍目(はため)からは何かに拝むみたいだった。
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