【短編】あたしとバカと自縛霊
声が出なかった。


絶望に打ちひしがれるとはこの事なんだろうね。


あたしは息をするだけで一杯一杯だった。


だから屋上は無遠慮な静寂に包まれたんだ。


それから再び也久が目を開けるまで、一体どの位掛かったんだろ。


一分か一時間か、もしかしたら一秒も掛かってないかもしれないなぁ。


その位、あたしの時間軸は既に使い物にならなかったって事で。


也久の開いた双眸には、あたしはもう映ってなかった。
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