【短編】あたしとバカと自縛霊
どこに、行くの?


無意味な質問だった。


わかってる。知ってる。理解してる。知悉(ちしつ)しきってる事だ。


也久は、幽子の下に逝くのだ。


青いベンチが歓喜を表すように喧しく鳴る。


駄目だ。そっちにいっちゃ駄目。


だけど也久はフェンスさえも飛び越えて、その身を死に曝(さら)す。


やめて、それ以上幽子に近付かないで。


伸ばした手は、届く訳もなくただ無意味に宙を掻いた。


「行かな……いで…!」


縋る様に出した声。


也久に届いたのか、あたしに振り向いて薄く笑んで。



























そして、あたしの視界から、彼はいなくなった。
< 31 / 32 >

この作品をシェア

pagetop