【短編】あたしとバカと自縛霊
声は、出なかった。
也久の最後は寂莫(せきばく)としたものだった。
目で追った也久の姿はもう過去で、既に虚構の中。
もう、この世界に也久はいない。どこにもいない。
幽子が連れて行ったのだ。
ほら見ろ、やっぱり幽子は怨霊だったじゃないか。
「うっ……、くっ……」
地面に零れる涙が染みを作る。
嗚咽は止みそうもない。
厭世観(えんせいかん)があたしを包む。
階下にざわめきが渦巻く。悲鳴も聞こえ始める。
あぁ、バカ野郎め。
あたしは泣く。
獣みたいに慟哭する。
悲嘆を込めて。
幽子に憎悪を込めて。
初恋の人に恋慕を込めて。
また、青いベンチがガタガタ鳴った。
ー了ー
也久の最後は寂莫(せきばく)としたものだった。
目で追った也久の姿はもう過去で、既に虚構の中。
もう、この世界に也久はいない。どこにもいない。
幽子が連れて行ったのだ。
ほら見ろ、やっぱり幽子は怨霊だったじゃないか。
「うっ……、くっ……」
地面に零れる涙が染みを作る。
嗚咽は止みそうもない。
厭世観(えんせいかん)があたしを包む。
階下にざわめきが渦巻く。悲鳴も聞こえ始める。
あぁ、バカ野郎め。
あたしは泣く。
獣みたいに慟哭する。
悲嘆を込めて。
幽子に憎悪を込めて。
初恋の人に恋慕を込めて。
また、青いベンチがガタガタ鳴った。
ー了ー