【短編】あたしとバカと自縛霊
声は、出なかった。


也久の最後は寂莫(せきばく)としたものだった。


目で追った也久の姿はもう過去で、既に虚構の中。


もう、この世界に也久はいない。どこにもいない。


幽子が連れて行ったのだ。


ほら見ろ、やっぱり幽子は怨霊だったじゃないか。


「うっ……、くっ……」


地面に零れる涙が染みを作る。


嗚咽は止みそうもない。


厭世観(えんせいかん)があたしを包む。


階下にざわめきが渦巻く。悲鳴も聞こえ始める。


あぁ、バカ野郎め。


あたしは泣く。


獣みたいに慟哭する。


悲嘆を込めて。


幽子に憎悪を込めて。


初恋の人に恋慕を込めて。


また、青いベンチがガタガタ鳴った。



ー了ー
< 32 / 32 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

群青
煌々/著

総文字数/23,408

ミステリー・サスペンス62ページ

表紙を見る
将棋少女
煌々/著

総文字数/19,108

青春・友情51ページ

表紙を見る
【短編】俺と鬼畜でカワイイかまいたち
煌々/著

総文字数/18,655

その他36ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop